Gianfranco Rosi 監督

〜現在起こっている人道的問題に焦点をあてた傑作〜

第66回ベルリン国際映画祭•最高賞の金熊賞はイタリアのジャンフランコ・ロッシ監督のドキュメンタリー映画 'Fuocoammare'『Fire at Sea』。地中海に浮かぶ小さな島Lampedusaに連日難民を乗せたボートがやってくる。この悲惨な様子を知ってほしいという監督の愛情いっぱいの映画。受賞した時真っ先に「希望の旅路にたどり着けなかった人たちのことを考える」と話し、人道的に彼らを受け入れる姿を見せてくれたLampedusaの人々に捧げたいと語った。去年の金熊賞のジャファル•パナヒ監督(イラン映画『タクシー』)と同様シネマ界にラブレターを書いたような作品だ。

舞台となったLampedusaの島はチューニジアとシシリー島の間にあり、ヨーロッパへ向かうアフリカや中近東からの難民が最初にたどり着く場所である。現在欧州で大問題となっている連日到着する難民を乗せたボートだが、保護された時にはすでに息絶えている人々も多いという悲痛な現場状況を描いている。しかしその一方で島で暮らす12歳の少年の日常生活が描かれている。島の人々が素朴に暮らす様子が重い課題とバランスを保つと同時に、双方の対照的な境遇も映し出す。社会派ベルリン映画祭にふさわしい監督の優しさが感じ取れる映画だ。またエキュメニカル審査員賞、アムネスティ・インターナショナル映画賞も並行して受賞しているのでこの映画の素晴らしさがうかがえる。

ベルリン国際映画祭でドキュメンタリー映画がこの金熊賞を受賞したのは初めて。ジャンフランコ・ロッシ監督は2年前のヴェネチア映画祭でも同映画祭初となるドキュメンタリー映画での金獅子賞(グランプリ)受賞を果たしている。優れたドキュメンタリー作家である以上にロッシ監督は他のドキュメンタリー監督たちに最高賞の希望を与えた。巨匠監督が男泣きしたドキュメンタリーは今年の必見作品だ。

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