池田暁 監督

〜映画:山守クリップ工場の辺り〜

この映画監督って天才かも。そんなことを思わせてくれた映画です。 バンクーバー国際映画祭(Vancouver International Film Festival)で、「山守クリップ工場の辺り(英語題:Anatomy of Paperclip)」の池田暁監督が新人監督賞(ドラゴン&タイガー賞)を受賞しました。私にしては珍しく仕事の間をぬって2回見ました。3回見てもいいぐらい、これでもかというぐらい新しい発見のできる映画でした。クリップ工場で働く淡々と同じ毎日を繰り返す主人公の小暮と、個性豊かな周囲の人々を不思議な世界観で描く作品。次々と繰り出される不思議な人々と出来事が、新鮮な驚きと笑いをもたらせてくれます。見る前は宣伝もなかったし大丈夫かなと疑っていました。でもとんでもない、失礼しました。男性の強さ、弱さ、すけべさ、無力さ、すべて魅せてくれるのです。時代は昭和のレトロ、どこの町なのかわからないけど懐かしい感じがする。それがかえって新鮮です。何もかもされたままの主人公、勝手に来て帰る蝶々女性、小さくて関西弁の不良ボスと大きいのに自信のない子分、セクハラボスとそれに逆らえない男性従業員たち、いい加減な商売をしている公園のおねえさん等、どのキャラクターも強烈で愛せる人たちです。そしてカナダ人に流行らせた言葉「かなげジュース」。池田暁監督は「男はみなこの主人公みたいな部分を持っているのではないか」と。英国映画評論家のトニー・レインズさんはこの映画を最初字幕なしで見て、おもしろいからもう一回字幕付きを見たそうです。池田監督、あなたの映画は最高です。作ってくれて、笑わせてくれて、どうもありがとう!

MovieGa 素敵な映画人

日本の監督を中心に海外の地元新聞に掲載された記事を集めています。 www.maplepress.ca