Claus Drexel クラウス•ドレクセル 監督

〜映画が贈り物になった〜

On the Edge of the World (Au bord du monde)

フランス、97分

パリで見かけるホームレスたち。多くの人はただすれ違うだけです。しかしドイツから来たドレクセル監督は彼らの話を聞きたいと思ったそうです。ただインタビューをするのではなく、友達になって自分の世界観や生活などを話してほしかった。そして一年間、キャノンC-300を持って毎晩彼らと時間を過ごし、会話していくうちにこの映画が生まれました。冬の間ホームレスたちは自分にも気遣ってくれたそうです。

この映画はできれば一人で見てほしいです。何人かのホームレスが毎晩目の前に座っているようなアングルで話をしてくれます。自分の生い立ち、今の苦しい状況、哲学など、そして笑顔も向けてくれる。戦争以外でこれほど精神的に苦しい撮影はないのではと思ってしまいます。監督の描く夜のパリの美しさがあまりにもホームレスの悲しさと対照的です。住む家がない、尊厳の権利を奪われる。。。それなのにホームレスたちは監督に心を開いて撮影させた。この監督もすごいと思います。

バンクーバー映画祭に招待されたドイツ•バイエルン州出身のドレクセル監督は、忙しい中インタビューに応じてくれました。最初パリに住んでいながらホームレスの人々が気になった、彼らが何を考えているのか、どういう世界観を持っているのか知りたいと思ったと言います。しかしインタビューなどしても意味がない、心を開いてもらうには毎日顔を合わせて行こうと考えました。そして1年間、監督自身が毎晩路上に顔を出し、彼らと話をするようになりました。そのうち同情でなく彼らの純粋な心に打たれました。彼らの声をきちんと伝えなければいけない、自分は彼らの視点から映画を作る、そんな使命感も生まれました。

最後に「こんなドキュメンタリーを作っても何も変わらないかもしれない、でも伝えたかったし伝えなければならない」「予定はないけど、できたら日本でも公開してほしい」と言ってくれました。そして「一番つらかったのは寒い夜の撮影でなく、撮影が終って彼らを残して自分の家に帰った時だ」と言ってしばらく間をおき、「この映画が自分の人生観も変えた」と締めくくってくれました。2013年のカンヌ映画祭を始め、ドイツ、ベルギー、カナダなど多くの国際映画祭から招待を受け、フランス国内のドキュメンタリー部門でグランプリ賞など数々の賞も受賞している作品。これは人生のために必見な映画だと思います。

©2013 Sylvain LESER / Haytham Pictures

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