〜何が起こるかわからないゾンビ映画「お前はもう死んでいる?!」~
ベルギー•ブリュッセルのBIFFFの会場に「俳優のように目立つ」品川ヒロシ監督が来た。ホラー系といえば地味な監督が多い。この雰囲気では通常の「いじめ」を通り越した「嫉妬」のヤジを受けないかと、関係者が心配した。しかし舞台挨拶では見事な歌唱力で拍手が起こり、映画上映中も笑いが湧いて初めて参加の国際映画祭は大成功だった。
品川監督といえば、独自の世界観あふれるシナリオが特徴である。今回は俳優•哀川翔さんの芸能生活30年を記念した「ヤクザ対ゾンビ」のアクション映画。『品川庄司』コンビ時代の格闘技がアクションに、そして「持って生まれた」お笑いとドラマ要素が盛り込んだエンターティンメントだ。
『Deadman Inferno(Zアイランド)』ストーリー
元ヤクザの組長•宗形(哀川翔)はカタギとなり服役していた弟分の娘を育てていた。しかし出所と同時に娘が家出し、連れ戻すために「銭荷島」(ぜにじま)へ向かう。その頃島では変な病気がはやり、感染者は不滅のゾンビ「Z」になっていった。ライバルのヤクザや無数のゾンビと戦いながら娘を探すというサバイバル•アクション映画。
とにかくシナリオがおもしろい。個性のある俳優陣だが、セリフの一つ一つが生きているのでどの俳優も映えている。上映中会場が爆笑した電話のパニック•シーンについて尋ねると、あれは自分で最初から考えたシーンの一つだそうだ。「実際にゾンビが出てきたらどうするか。110番しても警察はまず信じてくれない。電話で伝える時どう言えばいいんだろう」と頭をひねったそうだ。ホラー映画では残酷なシーンが続くので笑いは必要だった。これまでゾンビ映画をファンとして見ていたので、自分の頭の中で「これも言いたい、あれも入れたい」と貯めていたアイデアを取り入れたそうだ。
さらに監督は「海外のゾンビ映画は噛まれたら終わりでしょ。噛まれたら死体になる。今回はゾンビになった後も出演者として残したかった」と続ける。確かにヤクザもおばあさんもそのままのゾンビになっていた。また監督は「刀でゾンビの首を切り落とす。そんな日本ならではの映像がバンバン出てくる」「噛まれて死を選ぶ。これも切腹に通じるものがある」と海外向けの「日本」もアピールしている。
バイク姿がかっこいい主役の哀川翔さんだが、最初は「ベテラン俳優とコメディアン」の関係で私生活で可愛がってもらった。「僕が初めて映画を撮る時に出てやるよと言ってくれた」そうだ。彼はこの映画で強いヤクザと一般の優しいおじさんを見事に演じている。
「初めての映画祭で外国人の反応がとても気になる。怖いけれどそれが楽しみでもある」と笑う監督。ハラハラさせられて最後まで全く予想のつかないホラー映画。今から次の北米上映を期待したい。
品川ヒロシ監督のプロフィール
1972年、東京出身。吉本興業のNSC(ニュースタークリエーション)を卒業し、95年から同期の庄司智春さんと漫才•コントのコンビ『品川庄司』を結成。一方でドラマや映画の俳優、バラエティや歌番組でも活躍。2006年に自伝を元にした小説『ドロップ』で作家デビューし、2009年の同映画化で初監督となる。代表作に『漫才ギャング』『サンブンノイチ』など。2014年は東京国際映画祭の国際審査委員を務め、ベルギー•ファンタスティック(BIFFF 2015)が監督として初の国際映画祭招待となる。多才な芸能人として人気のある作家•監督である。
0コメント