~日本映画界を真実で斬る!~
世界のキタノはFOREVER TRUE!
バンクーバーをはじめ世界の映画祭で知られている“世界のキタノ”こと北野武監督が、第27回東京国際映画祭で新設された第1回 “SAMURAI(サムライ)賞を受賞した。しかし彼はレッドカーペットに登場しなかった。なぜ? 彼を追って10月25日、六本木アカデミーヒルズで開催されたトークイベントに向かった。
日本映画界に何が起こっているのか
今回のトークショーは今年新設された「SAMURAI賞」の受賞記念企画で、“日本映画の今と未来”がテーマ。「漫才の賞と映画の賞、あと前科までもらっているのは俺くらい」と会場を笑わせながら登場した北野監督。数多い映画関係者の中でもひときわ芸術のオーラを放っている。
世界が意外に思うのは北野映画が米アカデミー賞(外国語部門)に推薦されたことがない事実。これは黒沢映画も同様だが、米アカデミー賞は日本アカデミー賞最優秀受賞者しかノミネートされないからだ。それなのに日本アカデミー賞は偏った大手映画製作会社を優先する。またそれらの会社は劇場とマスコミも抑えている。今回PFF(ぴあフィルムフェスティバル)と日本学生映画祭で賞を受賞した若い監督たちに「そういう汚いことをやっているから日本映画はダメになる。大手の映画会社に巻き込まれないように、巻き込まれるならだますように」と楽しくはっぱをかけた。
ゲストの「本物しか相手にしない」映画評論家トニー•レインズ氏が「大手が認めないなら自主映画でがんばってくれ。君たちは驚くだろうが素晴らしい映画作品は思うほどないから競争率は激しくない」と続けた。カンヌ映画祭代表補佐のクリスチャン•ジュンヌ氏も「世の中の変化と共に監督も、監督のメッセージも変わる。みなさんが本当に伝えたいメッセージを発信できることを願う」と語った。
スレスレで生きること
北野監督はさらに若手監督たちに、自分が描きたいもの以外も認める余裕が必要とアドバイスした。「僕はアニメなんか大嫌い。でも、あれだけお金を稼げるのはすごいと認める。嫌だと思うものも認められる余裕のある頭が必要だ」と指摘した。
また人気の漫画や小説の映画化が多いのは、客が入るからとコメント。「よくわからない台本にお金を払う勇気のある映画会社がない」と語り、「俺なんか暴力映画ばっかり撮っているけど、それは当たるから。『なんだこのやろう』なんて本当はちょっと嫌だと思っている」と本音も伝えた。また「人間はどうせ死ぬ。社会的に迷惑をかけずに、スレスレで生きることを無限に考えた方がいい」という彼らしい持論を展開した。
また「みんな真面目すぎるよね。映画に人生なんてかける必要ない。余裕を持って常に自分を客観的に見た方が追い詰められなくて良い」「日本で作品の悪口ばかり言われていた時に初めて評価してくれたのがトニーさん。誰がどこで見ているかわからないので好きな映画を撮り続けてほしい」と若手監督にエールも送った。
映画「戦場のメリークリスマス」から30年あまりカナダをはじめ世界で知られる北野武氏。今回は若手監督だけでなく、映画界、マスコミにとっても刺激的なトークショーとなった。レッドカーペット以外でこれだけ国内外の観客を喜ばせる「純粋さ」に圧倒された。
0コメント